EAEの病態において、病勢に応じてCCL19やCCL21がBBBに発現し、CCR7陽性のナイーブT細胞や抗原提示能を持った細胞の浸潤に関わることが報告され、病巣局所において二次リンパ組織と同様の機序で抗原提示が行われる可能性を考察している。また、MSやOB陽性の視神経炎(ON)患者(初発のMS疑い)の髄液中CCL19は、対照群に比して有意に増加しているのに対し、OB陰性のON患者では増加していなかった。また、CCL21は対照群では全例発現感度以下であったのに対し、MSでは9例(n=47)で発現がみられた。我々も、MSの再発時にCCR7陽性のmemory細胞(Tcmに相当)やマクロファージが髄液中に増加することを学会に報告している。Lymphoid chemokineと呼ばれたケモカインも、リンパ組織がないと言われてきた中枢神経内において何らかの生理機能を担うことが推測され、今後MSの病態における意義が注目される。 MS患者の髄液中のCD4あるいはCD8陽性T細胞のCCR5やCXCR3の発現細胞の割合は有意に末梢血中に比して増加しており、MS患者末梢血中のT細胞のCCR1、CCR5やCXCR3の発現率は正常対照に比して有意に増加していることが報告された。また髄液中ではCCR1やCCR5のリガンドであるRANTES、MIP-1αが一部のMS患者で対照群に比して増加しており、またIP-10が有意に増加すること等が報告されている。特にCXCR3は髄液中に浸潤するT細胞のほとんどで陽性であることが示されており疾患との関わりが注目される。CXCR3は、脱髄巣周囲のT細胞の多くが発現すること、CXCR3のリガンドであるCXCL10/IP-10がMS病巣の血管周囲のアストログリアに発現すること、MS患者髄液中のCXCL10は髄液細胞数と相関することが示されるなど、Th1細胞の中枢神経系への浸潤に重要な因子と考えている。
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