本研究右は神経系多因子疾患のデータベース構築とゲノム情報を基盤としたデータマイニングを行い、神経疾患の原因究明と治療法確立に貢献することを目標としている。 多系統萎縮症は自律神経症状、錐体外路症状、小脳症状を呈する神経変性疾患であるが、現在も原因、根本的治療法が不明の難病である。本疾患は従来、孤発性疾患と考えられてきたが、病理学的に確認された家族発症例が複数確認され、発症における遺伝因子が注目されつつある。日本神経学会認定神経内科専門医3695名へのアンケート調査をもとに現在までに9家系を収集し、臨床遺伝学的研究を進めている。また多系統萎縮症の多施設共同研究を行うためのコンソーシアム、JAMSAC(Japan Multiple System Atrophy research Consortium)の立ち上げに参画し、事務局の一員として活動している。さらに、本疾患の自然経過を把握するために多系統萎縮症の患者臨床情報データベースも構築し、将来治療法が開発され、オーダーメイド医療が必要となった際の基礎資料とする予定である。 片頭痛に関しても多施設共同研究を開始し、患者検体を収集している。東京大学附属病院にて頭痛外来を担当する一方、患者臨床データベースも構築しつつある。一方、日本頭痛学会の頭痛診療ガイドライン作成に参加し、遺伝子の項の執筆を担当した。 なお、検体の取り扱いにおいては「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(平成13年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示)を遵守し、個人情報の保護においては細心の注意を払って進めている。
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