ヒトゲノムの解明に伴い、今まで原因不明であった遺伝性神経疾患の原因遺伝子が同定されているが、さらに環境因子と遺伝因子により発症する多因子神経疾患に関しても、疾患感受性遺伝子を見出すことが必要とされている。 神経多因子疾患の中でも、多系統萎縮症、片頭痛を対象に臨床データと検体の収集を行っている。特に多系統萎縮症については自施設内で患者42名、多施設共同研究としては患者128例の収集ができた。検体収集時には臨床情報も収集しており、さらに可能な限りフォローアップの評価もし、疾患の自然歴を明らかにすることも目標にしている。稀な家族歴を有する多系統萎縮症の調査研究に関しては、共著者として論文が報告されたが、さらに新しい家系も見つかっており、調査を進めていく予定である。 本年度は上記疾患について臨床情報(発症年齢、性別、家族歴、嗜好歴、治療反応性など)をデータベース化する一方、さらにDNAの収集を進める。患者の個人特定情報は入らない形でWEB登録するシステムを構築し、患者臨床情報のデータベース化を図っている。他施設との共同によりデータベースの規模も拡大して行く予定である。 片頭痛に関しては多系統萎縮症よりやや遅れてはいるが、多施設共同研究によりゲノム検体の収集をさらに精力的に行いたいと考えている。 検体採取に際しては「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を遵守し、文書化した十分なインフォームドコンセントの元に採血を行う。また患者個人情報の扱いに関しては細心の注意を払う。
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