本研究ではCreutzfeldt-Jakob病(CJD)における病変分布の選択性に着目し、異常プリオン蛋白の、正常プリオン蛋白に対する病原性の解明およびCJDにおける病態機序の解明ならびにプリオン蛋白本来の機能の解明を目的としてCJDの病態に関わる分子群の同定を目指している。平成17年度は特に脳幹・脊髄病変に注目して異常プリオン蛋白との関連性について免疫染色を用いて多数例で検討し、正常および異常プリオン蛋白と相互作用する分子群をそれぞれ同定する検討を行った。さらに脳幹部・脊髄における病変のvulnerabilityおよびsusceptibilityについてプロテアーゼ抵抗性プリオン蛋白のタイピングとプリオン蛋白遺伝子のmutationおよびcodon129多型について検討を行った。自験CJD例のcodon129多型解析は大部分がmethionineのhomoであり、異常プリオン蛋白のタイピングでは大部分が1型を示した。これらの結果は欧米CJD例と比べて頻度が大きく異なっていた。免疫染色による検討では異常プリオン蛋白の沈着は、脳幹では四丘体、黒質、橋核、下オリーブ核に多く、脊髄では後角に強かった。今後、大脳半球における検討を加えて、異常プリオン蛋白の病原性とCJDにおける病態機序の解明ならびにプリオン蛋白本来の機能の解明、さらには動物種を越えたプリオン病に共通する病態機序の解明を行っていく予定である。これらの検討により異常プリオン蛋白の病態発現機序を解明、有効なプリオン病治療法開発の布石となるものと考えている。
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