孤発性Creutzfeldt-Jakob病(CJD)における病変分布の選択性に着目し、自験剖検例を用いて異常プリオン蛋白の正常プリオン蛋白に対する病原性の解明およびCJDにおける病態機序の解明ならびにプリオン蛋白本来の機能の解明を行った。平成18年度はCJDの大脳新皮質・脳幹・脊髄・錐体路病変に注目して異常プリオン蛋白沈着との関連性を免疫染色ならびにプリオン蛋白のWestern blot解析(プリオン蛋白型)、プリオン蛋白遺伝子解析を用いて自験剖検例で検討し、正常および異常プリオン蛋白と相互作用する分子群をそれぞれ同定する検討をおこない、学会および英文誌において報告した。特に中枢神経系の各病変部位におけるプリオン蛋白に対するvulnerabilityおよびsusceptibilityについてプリオン蛋白型とプリオン蛋白遺伝子の変異・多型との関連を報告した。続いてプリオン蛋白遺伝子codon129多型とプリオン蛋白型が臨床病理学的表現型におよぼす影響について欧米例との差異について検討・報告した。さらにCJDの病変進展、臨床症状はミクログリアの発現亢進とも関連していることを報告した。また水輸送に関連する細胞膜蛋白であるAquaporinの発現をCJD剖検脳において検討し、CJDにおいて発現が亢進していることを世界で初めて報告した。これらの検討により異常プリオン蛋白の病態発現機序を解明するとともに、有効なプリオン病治療法開発の布石となるべくプリオン病の病態解明に迫るべく検討を進めた。またCJD剖検症例蓄積のため、関連病院と連携してCJD症例の剖検を積極的に行った。臨床経過、画像所見、神経学的所見の詳細な分析、病理所見との対比検討を行うとともに、髄液や脳組織の凍結保存を行い、当地区におけるCJDブレインバンクを構築した。
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