研究概要 |
ラット中脳由来ドパミン神経幹細胞の培養を行い,各種サイトカインによる刺激を加えて分化・増殖させた.その種々の段階でケトン体(D-βヒドロ酪酸)を投与し,ドパミン神経幹細胞の分化・増殖に対する効果をRT-PCR,蛍光免疫染色などを用いて検討した. 1.中脳由来ドパミン神経幹細胞培養:胎生ラット中脳より中脳由来神経幹細胞を培養した.培養条件は無血清培地を用い,線維芽細胞増殖因子(FGF-2)を添加して培養した.中脳由来神経幹細胞は培養3日目より増殖を始め,9日で増殖細胞塊を形成した.コーティングを施していないプラスチックフラスコにFGF-2添加無血清増殖培地で培養を続けると神経sphereが形成され,継代増殖可能であった.このsphereは無血清保存液を用いて増殖能・分化能を損なわずに凍結保存が可能であった.細胞外マトリックスを使用して培養すると分化培地に変更後効率的に神経細胞が得られた. 2.ドパミン神経幹細胞の増殖・分化の解析: 解析する刺激の条件 (1)ケトン体(D-βヒドロ酪酸)の中脳由来神経幹細胞の増殖と分化に対する効果を検討した. (2)神経栄養因子など既報の刺激シグナル(BDNF, GDNF, dopamine, pramipexolなどのdopamine agonist, Retinoic acid, folskolin等)とケトン体の影響を検討した. 解析する指標 (1)中脳由来神経幹細胞のmRNAを各々の条件で回収しRT-PCR法によりシグナルを解析した.幹細胞・部位関連のマーカー・シグナルとしてNestin, Nurr-1,分化シグナルとしてDAT, THを調べた. (2)蛍光免疫染色による解析を行なった.神経細胞マーカーとしてMAP-2,神経phenotypeマーカーとしてTH,グリアマーカーとしてGFAPをそれぞれ調べた. 今年度の解析をもとに,次年度,パーキンソン病モデル動物を用いた治療への応用を試みる予定である.
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