ゼラチンとGPSMの混合物を凍結乾燥して、孔径190±15imの多孔性担体を作製した。12週齢ウィスターラットの右前頭部を開頭し、脳皮質を切り取って欠損を作成し、担体を埋入しないコントロール群と、多孔性担体を埋入した群を作成した。さらに担体内にbFGFとEGFをそれぞれ0、1、5igずつ含浸させ、脳欠損直後に埋入する3群と、0、5igずつ含浸させ、脳欠損30日後に埋入する2群の合計6群とした(各群n=5)。埋入後1、2、3日後にBrdUを投与し、60日後に断頭し切片を作成した。HE染色による組織学的検索と、各種細胞マーカーを用いての免疫染色にて担体内の細胞種の同定を行った。 コントロール群では新しい組織は認められなかったが、担体埋入群では担体周囲の孔内へ組織の侵入が認められた。担体内組織の体積を定量すると、含浸したbFGFとEGFの用量依存性に増加し、また、脳欠損30日後に担体埋入群は、欠損直後に埋入群より担体内組織の形成は少なかった。担体内組織内には血管内皮細胞、アストロサイト、ミクログリアが認められ、特にアストロサイトが多く認められた。3種類の細胞はどの実験群においても担体内組織で同様の分布であった。しかし、神経細胞はどの群においても認められなかった。BrdU陽性細胞もbFGFとEGFの用量依存性に増加し、少数の血管内皮やアストロサイトでの取り込みを、また多くのアストロサイトでの取り込みを認めた。 ゼラチン-GPSMは中枢神経系の損傷部位に対して生体親和性を持ち、bFGFとEGFの併用により、脳組織再構築の有用な足場として機能する可能性があることを示した。
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