目的:日本人多発性硬化症(MS)患者において脱髄発作の再発や進行を予測する。方法:日本人MSは大脳に多発性の脱髄病変を呈する古典型MS(C-MS)と、視神経と脊髄にのみ病巣を持つ視神経脊髄型MS(OS-MS)の二つの病型が知られる。東京都立神経病院のOS-MS患者9名と、C-MS患者16名、健常対照25名を対象とし、TCRレパトアを解析し、特に1)MSの病型による特徴、2)経時的変化について検討した。結果:1)各群の検体が持つ平均活性化Vβ数は、OS-MS 4.89個、C-MS 2.06個、健常対照0.92個であり、OS-MS>C-MS>健常対照の順に、有意に活性化Vβ数が多かった。各Vβの活性化率を分析すると、OS-MSではVβ1およびVβ13遺伝子の活性化率がC-MSに比して有意に高かった。健常対照と比べると、OS-MSで有意に活性化率の高いVβはさらに増え、Vβ1、Vβ3、Vβ12、Vβ13、Vβ14、Vβ23であった。2)MS患者を平均3.9ヶ月間隔、平均Follow up期間7.5ヶ月間、計57回採血し、TCRレパトアの経時的変化を解析した。再発寛解型MSのTCRレパトアは、OS-MS、C-MSともに、活性化Vb数と臨床的障害度EDSSスコアとの間に、有意な正の相関があった。臨床的再発の5日前に採血した1検体で、再発に前駆して活性化Vbが増加していた。二次進行型MSのTCRレパトアは、EDSSが高くても活性化Vb数は少なく、臨床的な進行とVβの活性化に相関はなかった。結論:MSのTCRレパトアは病型・病勢により異なる特徴を持ち、これらもとに再発や進行の予測を行い得る可能性がある。今後はさらにHLAやその他のマーカーに対する遺伝子解析を行い、さらにその可能性を高める方針である。
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