糖尿病状熊の進行と共に強力な食事、運動、薬物療法にもかかわらず血糖のコントロールの更なる悪化、糖尿病の重症化が知られている。その機序としてのβ細胞の変性脱落には高血糖からの代謝異常と共に、血管変性に伴う虚血状態が重要と考えられる。この虚血性因子の関与についての報告は少ない。2型糖尿病モデルのGoto-Kakizaki(GK)ラットを用い、β細胞の変性・脱落における細胞内低酸素の関与を検討した。 GKラットを12週齢でhypoxiyprobe-1腹腔内投与後、sacrificeし、膵島の体積、形態的変化を検討した。コントロールであるWistarラット(WT)に比べ膵島は著明に線維化、硝子化を示し、うっ血、毛細血管の増生が認められた。一部では著明な炎症性細胞浸潤が認められた。インスリン抗体による免疫染色を施行し、morphometryを行ったところ、β細胞の有意な減少が認められた。しかしながら、抗hypoxyprobe-1抗体を免疫染色ではWTに比し、有意な染色性の違いは認められなかった。抗HIF1α抗体を用いた免疫染色でもβ細胞自体に有意な差はなかったが、血管内皮にGKでより明らかな陽性像が認められた。 In vitroの実験としては、β細胞のcell lineのMIN6細胞を用い、一方を低酸素に(酸素1%以下)、他方をNO donorであるSNAPを添加した状態で生存率をMTT assayにて比較検討した。4時間の低酸素単独及び1μMのSNAP添加単独では有意な差が見られなかった。4時間の低酸素+1μMのSNAP添加では各々の単独負荷に比し、有意に生存率が低下した。このことからβ細胞死には高血糖の持続や低酸素だけでなく、β細胞を取り巻く環境因子が重要であると考えられた。今後これらβ細胞対環境因子について更なる検索が必要である。
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