研究代表者は、アポEの余剰脂肪蓄積における役割を研究することによって、この2年間で以下の実績をあげた。 1.アポEを欠損した肥満・糖尿病モデルマウスを作成とその解析。 (1)アポEを欠損したマウスは肥満抵抗性で脂肪細胞の肥大化や脂肪肝の形成が抑制されていた。 (2)アポEを欠損したマウスは耐糖能やインスリン感受性が良好であった。 (3)アポEを欠損したマウスでは血中アディポサイトカインの異常が改善していた。 (4)アポEを欠損したマウスのマクロファージでは炎症関連分子の発現が抑えられていた。 以上の結果から、アポE欠損マウスでは余剰脂肪の蓄積を抑えることで肥満やインスリン抵抗性の増悪を抑制していると考えられた。 2.アポEを欠損した肥満・糖尿病マウスに遺伝子導入によってアポEを補充したことによる変化。 (1)アポEの補充によって体重と脂肪組織重量が増加した。 (2)アポEの補充によって褐色・白色脂肪細胞径が増大した。 (3)アポEの補充によって耐糖能が悪化した。 以上の結果から、アポE欠損マウスにみられた脂肪蓄積抑制やインスリン感受性はアポE欠損に起因するものと考えられた。 3.アポE欠損による脂肪蓄積抑制メカニズムの解明。 (1)アポEを欠損したβ-VLDLでは脂肪細胞への取り込みが低下していた。 (2)アポEを欠損したマウスでは摂食量が低下していた。 (3)アポEを欠損したマウスではエネルギー代謝が亢進していた。 この研究成果から、apoE欠損マウスでは脂肪組織に余剰脂肪が蓄積されていないことが、全身の糖代謝に好ましい影響を与えており、余剰脂肪蓄積のメカニズムの解明が肥満糖尿病に対する新規治療のターゲットにつながるものと考えられた。
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