研究概要 |
代謝異常症遺伝要因として,本邦における代謝関連核内受容体遺伝子変異臨床像とメカニズムを明らかとすることを目標とする.我々は核内受容体PPARα,γ,δ,LXRα,FXR,RXRγ遺伝子を高脂血症患者において網羅的に検索開始し,4個のミスセンス多型(PPARα G395E,PPARα D140N,PPARγ2 P12A,RXRγ G14S)と5'端非翻訳領域の多型(FXR -1g-> t)を同定した.RXRγ 14S多型は一般人男性(5%)、FCHL以外の原発性高脂血症患者(4%)と比較し、有意にFCHLにおいて高頻度で(15%,p=0.033),メタボリックシンドロームが多く含まれる冠動脈造影施行178例での検討では,有意にHDL-Cが低値であった.そのメカニズムとしてはヘパリン静注後のリポ蛋白リパーゼの低値と有意の相関があり,リポ蛋白リパーゼとHDL-Cが相関することが示されていることからHDL-C低値に寄与することが示唆される.また同変異保持者では冠動脈造影でcoronary stenosis indexが有意に高値であり,ステップワイズ法回帰分析ではコレステロールと独立した危険因子とする結果が出ていることから,脂質代謝以外でも炎症制御などを介したメカニズムが動脈硬化促進に作用している可能性があり現在検討中である.近年の報告で胆汁酸はエネルギー消費を促進することがマウスで示されているが,胆汁酸受容体であるFXR遺伝子の-1t多型保持者が複数の研究対象群で有意に高いBMIを示しており,同変異保持者はコレステロールが有意に低値である.また同変異保持者は腹部エコー評価による脂肪肝発症率が有意に低く,肝臓でのエネルギー代謝を介する影響が疑われる.動物実験では胆汁酸が甲状腺ホルモンシグナル系に作用することが示唆されており,ヒトにおけるそのメカニズムを解析中である.
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