骨髄細胞よりインスリン産生細胞を作成し移植に使用することが出来れば、移植用細胞の不足の問題は解決が可能である。本研究では、骨髄細胞の培養条件に工夫を加えるとともに、PDX-1、Pax4等の膵β細胞の発生・分化に関わる転写因子の遺伝子を細胞に導入することにより、幹細胞からのインスリン産生細胞の誘導を行い、より効率の高いインスリン産生細胞の発現を目指した。 1.Streptozotocin(STZ)糖尿病マウスにおいて、STZ投与4〜6週後骨髄細胞を採取しReverse Transcription(RT)-PCRによりインスリンmRNAの発現を検討したところ、インスリン遣伝子の発現が検出された。 2.CMV promoterの下流にPDX-1およびPax4のcoding geneを持ち、Hygromycin耐性遺伝子を下流に持つプラスミドをそれぞれ肝細胞およびβ細胞のcell lineであるHepG2、MIN6細胞にリポフェクション法により遺伝子導入を行った。HepG2、MIN6細胞において、PDX-1の発現は形態にほとんど影響を及ぼさなかった。 3.4〜8週齢のマウスから単離した骨髄細胞をFCSの有無、および培養ブドウ糖濃度で検討した結果、高ブドウ糖濃度(4.5g/L)で培養し、単離後3日間DMSO添加したFCS(-)培養液で培養すると分化誘導が促進された。 4.分化誘導促進した骨髄細胞にPDX-1およびPax4を遣伝子導入したところ、培養30日程度で比較的円形の細胞より、膵島様の細胞塊が形成された。この細胞塊を検討したところ、mRNAレベルでのインスリン発現を認めることはあるが一定せず、また糖尿病マウスへの移植による血糖降下を得られるだけの十分なインスリン発現は得られず、今後より効率のよいトランスフェクション法やインクレチンシグナルを併用を検討する必要があると考えられた。
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