ミネラルコルチコイドであるアルドステロンは、正常食塩摂取下では、腎臓の皮質部集合管細胞に作用して、ナトリウム、カリウムの調節を主に行う生体に不可欠なホルモンであるが、高食塩摂取下では、血管の炎症や心臓線維化などを惹起することが知られている。そこで、本研究では、心臓におけるミネラルコルチコイド受容体(MR)結合蛋白から心臓リスクホルモンとしての役割を明らかにすることを目的とした。 まずヒト心臓mRNAよりGal4 activation domainとligationさせたヒト心臓cDNAライブラリーを作製した。次に前記ライブラリーを用い、Yeast two-hybrid systemを用いてMR結合蛋白のスクリーニングを行った。約20種類のクローンが得られたが、DNA sequenceの結果、それらは全て同一の既報蛋白のC末端部分を含むクローンであることが明らかになった。その中でも最も長い部分を含むC末端のクローン(MRP-1と命名)は、イースト内ではホルモン非存在下ではMRと結合を認めず、アルドステロン、コルチゾール、スピロノラクトン存在下でMRと特異的な結合を認めた。またmammalian Two hybrid法の結果、哺乳類細胞HEK293細胞およびCOS-7細胞において、ホルモン非存在下でMRとの強い結合を認め、アルドステロン、コルチゾール存在下では強い結合が持続し、スピロノラクトン存在下では結合が減弱することが確認された。さらにMRP-1はCOS-7細胞において3xMRE-E1b-lucレポーターおよびMRとともに過剰発現させた場合、MRによる転写活性を減弱することが確認された。また、MRP-1の組織分布は、心臓に特異的に発現することから、心臓におけるアルドステロン作用に抑制的に機能する蛋白であることが示唆された。
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