1.ヒトT-ALL Xenograftモデルによるγ-セクレターゼ阻害剤の抗腫瘍効果の検証 我々は既にヒトT-ALL細胞株がSCIDマウスへ生着すること、さらには時系列での腫瘍体積の定量的な評価が可能であること、を確認しており、今回臨床的な治療効果の可能性を探る前提として動物モデル(SCIDマウス)のvivo投与の系で同剤の有効性を評価した。腫瘍細胞株を皮下接種の上、一定体積に達したのちに同剤を経口投与した。結果、10日から2週間でほぼ完全な腫瘍の退縮を観察した。この現象の作用機序として、腫瘍細胞の直接のアポトーシスの他、腫瘍血管新生の抑制が関与すると考えられた。このことは腫瘍局所の組織中の血管内皮細胞を免疫染色で定量評価した結果に基づく。以上より、ヒト白血病(T-ALL)のXenograftモデルにおいて、Notchシグナル阻害剤であるγ-セクレターゼ阻害剤が著明な抗腫瘍効果を呈し、少なくとも2ヶの作用機序を有することが判明した。 2.ヒトT-ALL細胞株を対象としたγ-セクレターゼ阻害剤と抗癌剤の相加・相乗効果(in vitro)の検証 我々はデキサメサゾン(ステロイド剤)とγ-セクレターゼ阻害剤がヒトT-ALL細胞株HPB-ALLに対して相加的な抗腫瘍効果を有することをvitroの解析で見い出した。また、チロシンキナーゼ阻害剤Imatinibとγ-セクレターゼ阻害剤がヒトT-ALL細胞株DND-41に対して相加的な抗腫瘍効果を有することも確認している。今後、これらの相加・相乗効果の作用機序についても考察を重ねていく。 3.ヒトT-ALLの臨床検体におけるNotch1活性化型変異の検出(小児および成人症例) 我々は成人症例においてもT-ALL患者14例中5例でNotch1活性化型変異が存在することを示し、このことはNotchシグナル阻害剤の臨床的適応の可能性を示唆すると考えられた。
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