白血病に代表される腫瘍性造血では、正常造血の場合と同様に、自己複製能力を有する白血病幹細胞が集団の維持と拡大を担っている。本研究は、白血病幹(/前駆)細胞の特性を把握し、治療の標的分子を探索することを目的とする。まず、hTERT(ヒトテロメレース逆転写酵素:正常の造血幹細胞でその活性が高いことが報告されている)遺伝子の上流約1.2kbに及ぶプロモーター領域に改良型緑色蛍光タンパク質(hrGFPまたはVenus)の遺伝子をつないだ発現ユニットを含む第3世代の自己不活化レンチウイルスベクターを作製した。これを感染させることにより、白血病細胞一個一個のテロメレース活性を生きた状態のままでフローサイトメトリーにより測定することができる。19例の急性骨髄性白血病(AML)細胞と3例の臍帯血CD34陽性細胞を対象にhTERTプロモーター活性の測定を行った。AML細胞のhTERTプロモーター活性では、サイトカイン刺激の有無にかかわらず患者間で大きな差異を認めた。AML細胞19例のhTERTプロモーター活性の平均蛍光強度(MFI)は、サイトカイン刺激なしでは臍帯血CD34陽性細胞におけるMFIの約2倍(2.5)であり、サイトカイン刺激下では臍帯血CD34陽性細胞のMFIとほぼ同じであった(5.7)。Venus発現強度は幅広くほぼ一峰性であった。また、一部の患者の白血病細胞は支持細胞であるHESS-5(マウス骨髄ストローマ細胞)との共培養にて敷石状領域を形成し、その中でも一部の細胞のみが強い蛍光を放った。これらのことから、白血病細胞集団にはhTERTプロモーター活性の連続的なヒエラルキーが存在することが判明した。また、一部の細胞ではサイトカイン刺激がない状態でもhTERTプロモーター活性が陽性であり、これらの細胞がいわゆる白血病幹(/前駆)細胞に該当するかどうか解析を進める予定である。
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