転写因子であるC/EBPαおよびサイトカインであるG-CSFとその受容体を介するシグナル伝達経路は、好中球造血に必須である。我々はG-CSF刺激によりC/EBPαの転写能が亢進すること、G-CSF受容体のY704とY764のチロシン基のリン酸化から始まる古典的MAPK経路が、G-CSF刺激によるC/EBPα転写能亢進の主要な役割を果たしていることを昨年までの研究で明らかにしてきた。本年度はG-CSF刺激により活性化されるC/EBPαの領域の同定を試みた。 293T細胞にG-CSF受容体、C/EBPαの認識塩基配列の下流にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだレポーターコンストラクトと伴に、野生型および種々のC/EBPα変異体を導入し、G-CSF刺激によるC/EBPαの転写活性能亢進に必要なC/EBPαの領域を検討した。126から200番目のアミノ酸を欠失したC/EBPα、200から255番目のアミノ酸を欠失したC/EBPαは、G-CSF刺激により野生型C/EBPαと同様に活性化されたが、1-118番のアミノ酸を欠失したC/EBPαおよび1-70番のアミノ酸を欠失したC/EBPαは、G-CSF刺激により活性化されなかった。よって、C/EBPαの5領域がG-CSFによる転写活性亢進に必須であることが判明した。次に、C/EBPαの21番目のアミノ酸であるセリンをアラニンに、および31-34アミノ酸がERKの活性化に重要なDEFドメインであるため、31番目のアミノ酸であるフェニルアラニンをアラニンに置換したC/EBPαのG-CSFによる活性化能を検討した。21番および31番のアミノ酸を置換したC/EBPαは、野生型と同様に活性化されており、このことよりERKにより直接C/EBPαが活性化されるのではなく、ERKが他の分子を活性化し、間接的1こC/EBPαが活性化されているメカニズムが想定された。
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