c-mybは成体型造血の発生に必須であり、その遺伝子破壊マウスは成体型造血の不全による貧血で胎生15日前後に致死となる。また、未熟な血液細胞においてc-mybの発現上昇が見られている。そこで、このc-Mybの詳細な機能解析を行うためにES細胞のin vitro分化系とテトラサイクリン(Tet)による遺伝子発現系を組み合わせて研究を推進した。c-myb遺伝子破壊ES細胞(c-myb-KO/ES)の血管内皮細胞から成体型造血は全く観察されなかった。そこで、c-myb-KO/ESからc-myb遺伝子発現誘導をテトラサイクリン(Tet)制御下で行えるES細胞(c-myb-Tet/KO)を樹立した。血管内皮細胞以降にc-myb遺伝子発現誘導を行うことにより成体型の血液細胞発生が回復したが、野生型と比較してその成体型血液細胞は巨核球および未成熟な赤芽球の増加となった。c-mybの異所性発現は、CD71^<high>Ter119^<positive>以降にGATA2の異常発現を誘導および赤血球分化が抑制された。再度Tetの添加によっても、GAIA2の発現異常および赤血球分化抑制の解除は観察されなかった。血管内皮細胞からCD41^+CD45^+細胞が発生する。この細胞集団は一過性に存在し、野生型では様々な血球を発生した。しかし、c-myb-Tet/KO由来のCD41^+CD45^+細胞集団は、野生型ES細胞由来のような多分化能を有していなかった。さらに、c-myb遺伝子発現誘導を行ってもB細胞発現は全く回復しなかった。Tet濃度によるc-Mybタンパク質分子の発現量を調節してもB細胞は発生しなかった。以上の結果より、c-mybは細胞系譜ならびに各々のステージにおいてもその発現は変化し、細胞の分化を制御していると思われる。
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