研究概要 |
ダイヤモンド・ブラックファン貧血症(DBA)の発症機序についてはほとんど知見が得られていない。重要な手がかりは、患者の約25%で確認されたリボソームタンパク質遺伝子RPS19の変異であり、その発現量が疾患と深く関わる可能性が高い。そこで、個体レベルでの解析を進めるために、ゼブラフィッシュにおいてRPS19の発現を抑制し、DBAモデルの作製を試みた。 1.モルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)による遺伝子の発現抑制 ゼブラフィッシュの受精卵に、RPS19のmRNAに対するMOを微量(0.5μg/μl,0.5nl)注入してS19タンパク質への翻訳を阻害し、受精後24時間(hpf)胚の形態形成過程でおきた異常を観察した。その結果、頭部、卵黄伸長部の形成不全、耳石、尾部の変形、血球数の変化が認められた。これら表現型は、長さ25塩基のうち5塩基をミスマッチにしたMOを注入した場合にはみられないことから、S19タンパク質の量的低下によるものであると判断した。さらに、MOと共に人工合成したRPS19のmRNAを注入し、個体形成が回復することも確認した。 2.RPS19発現抑制胚を用いた造血系転写因子の発現解析 血球系細胞の各分化過程で特異的に発現する遺伝子(lmo2、gata1、gata2)に対するRNAプローブを作成し、8〜16hpfで固定した胚を用いてホールマウントin situハイブリダイゼーションを行った。その結果、16hpf胚におけるgata1の発現が、正常胚に比べて減少している可能性が示唆された。 3.DNAチップを用いた解析 RPS19発現抑制胚(10、22、30hpf)からRNAを抽出し、ゼブラフィッシュの遺伝子14,900個のプローブが固定されたDNAチップを用いて発現解析を行った。現在、発現が大きく変動する遺伝子について解析を進めている。
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