先天性の赤芽球ろうであるダイヤモンド・ブラックファン貧血(DBA)患者の25%でリボソームタンパク質(RP)S19遺伝子の変異が確認された。しかし、すべての細胞に存在するRPと特定器官の異常がどう結びつくのかは全くわかっていない。そこで、正常なRPの量的不足により、赤芽球特異的に異常が起こるメカニズムをゼブラフィッシュの系で解明するために、DBAモデルの作製を試みた。まず、rps19以外のRP遺伝子も造血の異常に関わる可能性があると考え、モルフォリノアンチセンスオリゴを一細胞期の受精卵に注入する手法を用いて、21種類のRP遺伝子の発現抑制胚を作製した。これらの形態形成を24時間で詳細に観察し、さらに、26〜29時間胚の循環血球の密度や心拍の観察、30〜48時間胚に対するヘモグロビン染色を行った。その結果、rps19、rp135、rp135aおよびrp1p2遺伝子の発現抑制胚で特に血球密度の低下が観察された。これは脳や体幹の形態異常とは独立した表現型であった。つまり、造血系細胞は、これら4つの遺伝子の変異に対する感受性が高いと予想された。また、rps19発現抑制胚が示した血球数減少および形態異常は、合成したrps19のmRNAの注入によってほぼ完全に回復し、DBA患者型の変異を含むmRNAではそのような回復は見られないことを確認した。従って、rps19発現抑制胚はDBAの発症機序の解析に有用であると考えた。マウスを用いたDBAモデルの作製は成功しておらず、これまでの解析は細胞レベルに限られていた。本研究において、ヒトと同様の造血システムを有するゼブラフィッシュで貧血様の表現型を示す個体が得られたことにより、今後、RPS19が関わる赤血球形成過程について、新たな知見が得られることが期待される。
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