マウス造血幹細胞において、幹細胞特異的に発現している受容体型チロシンキナーゼTie2とそのリガンドであるAngiopoietin1は、造血幹細胞の静止期維持に重要な役割を果たしていることから、本研究では、ヒト臍帯血造血幹細胞におけるTie2/Angiopoietin1の制御機構を明らかにする目的にて以下の解析を行った。 1)ヒト臍帯中の分化抗原陰性Tie2陽性(Lin-Tie2+)細胞の解析 ヒト臍帯血中のLin-Tie2+細胞をcell sorterを用いて単離し、半固形培地での培養でコロニー形成能を検討したところ、この細胞集団には、コロニー形成能を持つ未分化な造血細胞を極めて多く含んでいることが明らかになった。 2)ヒト造血幹細胞におけるTie2/Angiopoietin1の作用の解明 ヒト臍帯血中のLin-Tie2+細胞をcell sorterを用いて単離し、BSA、SCF、TPOを加えた無血清培地で培養し、培養液中に可溶性Angiopoitin1 VariantであるCOMP-Ang1を加えることによる、分画に含まれる幹細胞の未分化性の維持および自己複製能に対するTie2/angiopoietin1の作用を、放射線照射した免疫不全マウスへの移植による造血再構築能について検討した。その結果、COMP-Ang1を加えたことにより、ヒト臍帯血中の造血幹細胞の未分化性がより維持されることが示唆された。臨床での応用については、最も効果的に幹細胞の未分化性を維持できるザイトカインの組み合わせや、培養日数、COMP-Ang1の濃度等について、さらなる検討が重要であると考えられた。
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