本年度は特にSTAT3/NF-κB複合体の誘導メカニズム並びに役割を解明する事を目的として研究を進めてきた。STAT3/NF-κB複合体の誘導はHep3B細胞において最初に観察されたので、先ずこの細胞を用いた更なるシグナル経路及び遺伝子誘導の解析を行った。 Hep3B細胞にSTAT3/NFκB複合体を誘導することができるプラスミドpFM289(これはTRAF6の288番目までのN末端配列を欠損した変異体で、更にそのN末端側にSrcファミリー分子が持つ特徴的な配列‘ミリストイレーション'を遺伝子的に導入したものである)をトランスフェクションし、種々のリポータープラスミドを用いたルシフェラーゼアッセイを行った。 pFM289はIL-1刺激や、ドミナントポジティブとして働くMyD88及びTRAF6野生型によって誘導されるNF-κBの活性化を抑制した。更にはIL-1によって活性化されるiNOSリポーター遺伝子の活性化も阻害した。 一方、IFN-γによって活性化されるGASやhSIEにはSTAT分子が関与しているが、その活性化もpFM289は抑制し、また血管新生に関与する事が知られているIL-6/STAT3により活性化されたVEGFリポーター遺伝子の活性化も抑制した。更には、pFM289はミリストイレーション付加をしていない変異体に比べ、これらの活性化geneに対し、より効果的な阻害様式を呈していた。 以上より、腫瘍性増殖に重要と考えられるNF-κBとSTATの経路に対し、pFM289は効率よく抑制することができる事が示唆された。この点を踏まえて、次年度は白血病細胞での検討及びより機能約な点から検討を加えていきたいと考えている。
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