1.Hemangioblast様細胞の特定 Hemangioblastというのは、血管と血液の共通の前駆細胞として知られている。当初この指様細胞は、Hemangioblastと考えていた。観察によれば、指様形状を有する細胞から血管と血液に分化するが、指様形状を有する細胞は形態学的にはストローマ細胞に酷似している。従来は、造血幹細胞は可塑性があり、造血幹細胞から神経幹細胞、肝幹細胞、筋肉幹細胞、へと可塑的に脱分化後再分化するという理論があったが、もしここで仮定している造血幹細胞が間葉系幹細胞であれば、可塑性というような不自然な理論をつくらなくても、単なる分化のプロセスとしてとらえることができる。指様細胞がストローマ細胞である、との仮説によって、すでに、我々はin vitroにて間葉系幹細胞からストローマ細胞を経て、血液や血管へと分化するという生体内プロセスを再現したことになる。血液は、増殖分化するにあたり、骨髄内で浮遊することがないように、骨髄内で接着細胞たるストローマ細胞となり、このストローマ細胞から血液や血管に分化すると考えることが自然である。早稲田大学ではヒト細胞は扱えないために、現在、このフィンガーライク細胞はサル由来のものをもちいており、ストローマ細胞と特定できるマーカーを探索中であり、形態学的だけでなく、表面マーカーからの特定を図る。 2.汎用性のある培養上清の作製プロトコル 従来プライマリーのOP9細胞を培養し、その培養上清をもって分化培養していたが、今年度は株化されたOP9の培養上清をもって検証したところ、株化されたOP9でも同様の効果が得られることがわかった。株化されたOP9細胞は大量生産が可能であるために、ES細胞から指様細胞、そして血液、血管への分化という流れのなかで大量に使用される培養上清の確保に成功したということができる。
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