研究課題
炎症性・自己免疫性疾患などに多用されるグルココルチコイド(GC)療法には、組織選択性・特異性が無いこと、副作用が必発であること、などの致命的な欠点が存在する。これらの問題点を克服した新規GC療法創成の分子基盤を構築するためには、GCの作用・副作用に関する各組織でのGC受容体(GR)の役割を明確化することが重要である。そこで、GC薬理作用の主要標的臓器である、心、脳、腎、大腸に関して、各組織特異的なGRの標的遺伝子群及びそれらの発現調節機構を明らかにすることを目的として以下の研究を進めた。1.組織特異的FLAGタグ融合グルココルチコイド受容体(FLAG-GR)過剰発現系の構築FLAGタグ付きGRの過剰発現系を用いて、GRと他の細胞内因子との相互作用の高感度検出系を構築することを目的とした。FLAG-GR過剰発現系にはCre-loxPシステムを用いたアデノウイルスベクターを使用した。また、GRの役割をより明確化させるため、各種変異GRも作成した。現在、マウスにおいて心筋、脳、大腸・腎特異的にFLAG-GRを発現させるために、各々、ミオシン軽鎖、Ca^<2+>/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII、2型11β水酸化ステロイド脱水酵素のプロモーターを利用したCreリコンビナーゼ発現アデノウイルスも作製中である。2.各組織におけるGR特異的標的遺伝子の解明リガンドには、GR特異的リガンドとしてコルチバゾールを、従来型のグルココルチコイドとしてデキサメタゾンを用いて以下の解析を進めている。(1)まず、HepG2細胞にFLAG-GRを過剰発現させ、リガンドで処理後のmRNAを調整し、DNA microarray解析に付した。ヒト脳、心筋、大腸、腎の各種細胞株においても同様の解析を行う。(2)また、マウス脳、心筋、大腸、腎でのFLAG-GR過剰発現系構築後、各組織からmRNAを調整して、DNA microarray解析に付す予定である。3.各組織におけるGR特異的標的遺伝子の発現制御機構の解明まず、HepG2細胞にFLAG-GRを過剰発現させ、リガンドで処理後、核抽出液を調製し、抗FLAG抗体による免疫沈降法を行ったところ、組織あるいは薬剤に特異的なバンドパターンが得られた。今後、ヒト脳、心筋、大腸、腎の各種細胞株も用いて、TOF-MAS解析やクロマチン免疫沈降法などを駆使し、組織特異的なGR標的遺伝子の発現制御機構の解明をすすめる。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America 102・24
ページ: 8555-8560
Molecular Endocrinology 19・5
ページ: 1110-1124