Suppressor of Cytokine Signaling-1(SOCS-1)はサイトカインシグナルを負に制御する分子であり、過剰な免疫応答を抑制する。またSOCS-1は、CD25+CD4+制御性T細胞(Treg)において恒常的に発現している。免疫制御に重要な役割を果たすSOCS-1分子とTregの両者に注目して免疫制御機構に関する研究を行った。 IFN-γ KOマウスをコントロールとし、長期生存可能なSOCS-1/IFN-γダブルKO(DKO)マウスを使用して実験を行った。IL-2はTregの増殖や生存に重要なサイトカインであるが、SOCS-1/IFN-γ DKOマウスにおけるTregでは、IL-2刺激によって生じるSTAT5活性化が遷延することがわかった。また、DKOマウスにおけるリンパ系臓器では、CD4細胞全体の中に占めるCD25+CD4+Tregの割合が通常よりやや高いことが、FACS解析にて判明した。これは、SOCS-1欠損によつてIL-2の作用が高まり、Tregの増殖または生存が増強されたためと考えられる。一方、DKOマウスのTregの正常CD4T細胞と共培養し、正常CD4T細胞の増殖をCFSE dilution assayで検討したところ、Tregの増殖抑制効果はコントロールTregと同等であった。これは以前の実験結果と異なるが、アッセイ系の違いによるものと考えられる。すなわち、Tregの免疫制御活性において、SOCS-1は必ずしも必要でないものと考えられた。 Tregが正常と同等以上に存在するにもかかわらず、SOCS-1/IFN-γ DKOマウスは加齢とともに慢性炎症を自然と発症し、早期に死亡する。DKOマウスのCD4T細胞のサイトカイン産生を調べると、その多くがTh17と呼ばれるIL-17産生細胞が分化していることがわかった。最近の報告によればTregがTh17応答をむしろ促進する可能性が指摘されている。今後、DKOマウスにおけるTh17応答亢進のメカニズムについて解析を行う予定である。 Treg関連の免疫制御分子の検索として、TGFβ刺激後のマウスCD4T細胞株由来のライブラリーを用いてSignal Sequence Trap法を行った。同定した新規分子のうち特にリンパ系臓器に発現の強いものを選び、今後、細胞株やマウスCD4T細胞において強制発現やノックダウンを行い、新規分子の免疫制御における役割を解析していく予定である。
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