1.研究目的 C型肝炎ウイルス(HCV)陽性母体から出生した児の血清を、われわれが樹立したHCV組み換えウイルス感染実験系に作用させて、その反応性を検討する。感染性への影響がみられた血清中サイトカインの測定、および臨床プロファイルを解析し、母子感染成立に関与する因子の解明とともに、予後因子の検討を行い、HCV陽性母体から出生した児の長期管理指針作成の科学的根拠としたい。 2.研究実施経過 (1).HCV母子感染症例の血清保存: HCV母子感染症例、および母体HCV抗体陽性例に関して、経時的に児の血清を収集、凍結保存をしている。 (2).抗HCV抗体の解析: 血清中の抗体成分とHCVの各タンパクとの結合性に関して、フローサイトメトリー法を用いて検討したところ、有意な結果は得られなかった。現在、ウエスタンブロット法にて検討中である。 (3).HCV感染実験: HCV組み換えウイルス感染実験系での反応性を検討したところ、HCV母子感染症例(急性肝炎発症例)一例で感染増強効果が認められた。また、少数例ではあるが母体HCV抗体陽性症例において感染増強効果が認められた。感染増強効果に関しては、移行抗体、あるいは何らかの血清因子の作用と考えられ、現在、解析中である。 (4).血清中の各サイトカイン濃度の測定: 血清中の各サイトカイン濃度を測定し臨床プロファイル、感染実験系の結果と合わせて解析していく予定である。 これまでの研究結果を第108回日本小児科学会学術集会、および第32回日本小児栄養消化器肝臓学会、第53回日本ウイルス学会で発表した。HCV母子感染症例は極めてまれであることから、学会発表と同時に検体提供の呼びかけを行い、他施設からの検体提供を受けている。 今後、多数例の検討を行い、感染増強メカニズムの解析、母子感染成立因子・予後因子の解明につなげていく。
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