研究概要 |
1.研究目的 C型肝炎ウイルス(HCV)陽性母体から出生した児の血清を、われわれが樹立したHCV組み換えウイルス感染実験系に作用させて、その反応性を検討する。.感染性への影響がみられた血清の臨床プロファイルを解析し、母子感染成立に関与する因子の解明とともに、予後因子の検討を行い、HCV陽性母体から出生した児の長期管理指針作成の科学的根拠としたい。 2.研究実施経過 (1)HCV母子感染症例の血清 HCV陽性母より出生した児の血清を自施設および他施設より提供して頂いた。 (2)HCV感染実験 HCV陽性母体より出生した31症例の血清に関いて、HCV組み換えウイルス感染実験系での反応性を検討した。11症例の検体では感染増強効果が認められた。特に、母子感染症例では4/5(80%)の症例において、感染増強効果がみられた。これは、母子感染が成立しなかった症例群と比較し、統計学的に有意に高率であった(p<0.05)。 (3)感染増強に関与する因子の探索 Mannan-binding lectinは自然免疫において重要な役割を果たしている。特に病原微生物の糖タンパクと結合することで抗病原活性を有することから、高度に糖修飾されている外被タンパクをもつHCVに関しても感染防御に関与する可能性が考えられる。今回の感染実験に用いた血清中のmannan-binding lectin濃度について検討したところ、有意差は認められなかったが感染増強効果がみられた群のサンプルにおいて低値を示す傾向がみられた。 以上の結果よりHCVの母子感染成立に関して、HCV感染を助長する何らかの血清因子が関与している可能性が示唆された。,Mannan-binding lectinなどの糖タンパクについて、さらに検討を進めいていき、HCV母子感染メカニズムの解明につなげていく。
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