研究概要 |
医学の進歩により,チアノーゼを持ちながら学童・成人に達する先天性心疾患患者も増加している.これらの患者では,低酸素による血管新生系の活性化亢進が推測され,実際に側副血行路がよく発達しているが,ときにこの生体反応が異常な病的血管新生をもたらし,最終手術を不可能にすることもある.本研究では,チアノーゼ性心疾患(CCHD)における血管新生作動タンパク質を特定することを目的とし,病的血管新生に対する新たな治療法を探索する. 昨年度までの研究により,(1)増殖因子を除いたマトリゲル内でヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を培養する系を用いて既知の血管新生分子に対する種々の抗体や阻害剤を患者血清に反応させtube formationへの影響を解析,(2)トランスウェルを用いてHUVECの遊走能を検討,(3)ELISA法にてCCHD患者血清内のVEGF値の測定を行った結果,CCHD患者の血清にはVEGFが含まれており,血管新生に重要な役割を果たしていることが推測された. 本年度は,CCHD患者における新たな血管新生作動タンパク質の特定を行うべく,プロテオーム解析にむけて患者血清を収集した.適切な症例数が収集できず,まず以下の研究にて予備実験を行った. 1.上記(1)の系を用いて,カテーテル検査時に採取した部位別の血清におけるtube formationを検討した.採取部位での差がみられた. 2.カテーテル検査時に採取した部位別の血清を用いて,プロテオーム解析を行った.採取部位でのタンパク質の発現量に一定の差がみられた. 以上の結果は,血管新生物質の特定の手がかりとなる可能性があり,症例数を増やして検討を重ねていく予定である.
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