我々は感染症を契機に無治療で芽球が減少して正常造血が回復し、3週間以上も寛解が持続した急性リンパ性白血病(ALL)の3症例を経験し過去に報告した(赤羽ら、第44回小児血液学会総会、2002年)が、これらの症例では感染により活性化された免疫系で、TRAILやFasLといった細胞傷害因子を介した抗白血病作用が誘導された可能性が考えられた。我々が経験した症例は全てB-precursor ALLであり、小児ALL細胞株を用いた昨年度の本研究ではTRAIL感受性株はB precursor-ALL細胞株に多いことが確認されたことから、感染を契機にしたALLの自然退縮にはTRAILを介した抗白血病作用が関与している可能性が考えられた。一方、T-ALL症例ではこのような報告はなく、本研究でもT-ALL細胞株はTRAILに耐性傾向を示したことから、本年度はT-ALL細胞株をはじめとするTRAIL耐性株の耐性機序の解明に焦点を絞り解析を行った。まず各細胞株におけるTRAIL受容体の細胞表面発現をflow cytometryで解析したところ、TRAIL耐性株ではdeath domainを有するDR4とDR5の発現が陰性であった。そこで、TRAIL耐性株におけるDR4およびDR5遺伝子のプロモーター領域のメチル化についてMethylation specific PCR法を用いて検討したところ、DR5遺伝子プロモーター領域のメチル化が多くの細胞株で認められた。この解析結果から、T-ALL細胞株のTRAIL耐性機序の一因として、DR5遺伝子プロモーター領域のメチル化が関与している可能性が推測されるが、これは脱メチル化剤が難治性白血病に対して有効な治療法となる可能性を提示するものと考えられる。
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