研究概要 |
本研究はケミカルシャペロンが変異蛋白の構造を正常に近づけることによってペルオキシソーム形成を促すという仮説の検証を目的としている。 当研究室で把握したZellweger症候群患者の中で臨床症状が軽症または中等症で、かつ皮膚線維芽細胞において温度感受性を持つ(37度と30度で培養を行い、カタラーゼ染色を用いてカタラーゼが30度でのみペルオキシソームに局在する)患者細胞株を2つの相補性群(pex2遺伝子とpex13遺伝子変異をそれぞれ原因とする相補性群)について使用した。 ケミカルシャペロンによるカタラーゼ染色の変化を共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し,複数の薬剤について検討し、カタラーゼ染色においてグリセオールのみが5%ほど37度でのカタラーゼのペルオキシソームへの輸送を回復させた。グリセオールにおけるカタラーゼ染色の改善に関して、さらに改善させる為の併用薬剤に関して候補薬剤を探索すべく薬剤スクリーニングする方法を検討し、pex14pというペルオキシソーム膜蛋白を赤色蛍光を発する蛋白との融合蛋白として発現させ、また緑色蛍光を発するGFPにSKLというペルオキシソームへの輸送シグナルをつけた融合蛋白を強制発現させ、両者のペルオキシソーム局在化を同時に起こす薬剤を黄色蛍光シグナルとしてグリセオール存在下で捉えることができるようにする方法を考えたが、pex14pの赤色蛍光蛋白の発現がうまくいかなかったことからその実験まで到達する事ができなかった。現在は今までとは見方を変えてペルオキシソーム膜流動性変化がペルオキシソーム蛋白輸送に与える影響に着目し、グリセオールによるケミカルシャペロン効果との関連について、膜流動性を変化させるコレステロール、リン脂質、長鎖脂肪酸などを用いて検討中である。
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