アレルギー疾患、慢性炎症性疾患に対する治療ターゲット分子として、自然免疫を惹起するための病原体構成成分特異的認識受容体であるToll like receptor(TLR)とIL-18を含むIL-1受容体ファミリーに共通の細胞内シグナル伝達アダプター分子MyD88の蛋白立体構造及び機能解析を試みている。安定同位体元素ラベルの15N-硫酸アンモニウム及び13C-グルコースを用い、標識されたMyD88リコンビナント蛋白を作成し、高濃度の単量体蛋白サンプルを調整、核磁気共鳴法(NMR)を用いた手法で、得られた蛋白の各アミノ酸のシグナルを帰属し、各原子間の距離情報を得たのち立体構造を計算し、精密な溶液立体構造を決定することに成功した。この成果はすでに、第56回日本アレルギー学会秋期学術大会(2006年11月)、第8回創薬ビジョンシンポジウム:「膜分子の構造・機能・相互作用解析と創薬・創剤」(2007年1月)、タンパク3000総合シンポジウム タンパク3000の成果と今後のタンパク研究展望(2007年2月)にて報告している。得られたMyD88TIRdomain構造とすでに報告のある他のTIRdomain結晶構造と比較を行なったところ、LPS不応性マウスの遺伝子変異部位やTLR2の変異体結晶構造と機能解析からTIRdomain間のシグナル伝達に重要とされ保存性の高いBBloop部分の構造にも大きな差異を認めた。さらにTIRdomain構造は全体としてかなり類似しているが、表面電荷ポテンシャルはそれぞれで大きく異なっている。そこで構造情報から重要と思われる極性アミノ酸残基について変異体を約40種類作成し、in vivo及びin vitroでの蛋白間相互作用機能実験を通じて、IL-18受容体蛋白またはTIRとの結合様式の特異性をの決定を目指している。
|