研究概要 |
霊長類ES細胞を血管内皮増殖因子(VEGF)存在下でM-CSF機能的欠損マウス由来のストローマ細胞株OP9の上で共培養し、6日後に出現する造血前駆細胞である血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)-2強陽性、CD34陽性細胞をフローサイトメトリーを用いてソーティングした。以後は得られた前駆細胞を赤血球の増殖・成熟に作用するサイトカイン(EPO、IL-3、SCF、TPO)存在下でOP9細胞上にまき直し、出現する血液細胞の特性を経時的に解析した。浮遊細胞中には培養12日目と30日目をピークとした血球産生が観察され、その90%以上は赤血球で構成されていた。培養18日目以降より赤血球の最終分化過程である脱核を終了した赤血球も出現した。免疫染色およびリアルタイムPCRによるヘモグロビンに対する経時的解析では、後期の赤血球産生に一致して胚型グロビン(ε、ζ)の発現低下と成体型グロビン(β)の発現上昇を認め、卵黄嚢(一次造血)から胎児肝(二次造血)の赤血球造血を再現していることが明らかとなった。付着血液細胞を用いたコロニーアッセイにおいても一次・二次造血由来のコロニーが順に出現することを確認した。OP9細胞の共培養システムと細胞選別システムの併用により、霊長類ES細胞から比較的純化された成熟赤血球の分化誘導が可能になった。今後は,赤芽球系前駆細胞をさらに純化し、機能的に成熟した大量の成体型赤血球のみを選択的に増殖する培養方法を検討していく予定である。
|