研究概要 |
造血幹細胞移植(SCT)後の合併症の多くは,移植片の生着する移植後2-3週以降に認められることが多いことから,SCTの前後での顆粒球機能の検討を行っている.なお、造血幹細胞移植は,血液悪性疾患に限らず非腫瘍性血液疾患,免疫不全症など様々な疾患の様々な時期に行われるため,これらの疾患の治療時期による顆粒球機能の変化について,まず理解しておく必要があり,平成17年度は,小児の悪性疾患の大部分を占める急性リンパ性白血病の各治療時期における顆粒球機能を検討した. 対象は平成17年3月以降に当科に入院となった急性リンパ性白血病(ALL)患児(n=8),対象群は健常成人(n=6).方法は診断時,寛解導入療法後,強化療法後に全血法にて顆粒球機能(貪食能・殺菌能)を測定し,臨床像との比較を行った.結果は以下の通りである. (1)小児ALL患児における貪食能は個体差が大きく,初発時,寛解導入療法後,強化療法後いずれの時期においても,正常コントロールと比べ差を認めなかった.(2)殺菌能は,初発時に最も低下しており,寛解導入療法後には改善を認めるものの,正常コントロールと比べ低下していた.しかし強化療法後には正常化した.(3)臨床像は、7/8例が寛解導入療法後に完全寛解に達した.なお寛解導入療法中の重症感染症は,顆粒球機能・数ともに低下しているにもかかわらず,一例のみに認めたに過ぎなかった.(4)初発時の臨床症状(発熱,肝脾腫等)や検査所見(白血球数、炎症反応等)と顆粒球機能に,関連性を認めなかった. 以上の内容の一部について第53回神奈川血液研究会に発表した.平成18年度は顆粒球機能の移植前後での比較と,凍結保存してある血清でのサイトカイン等の測定・検討を行う予定である.
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