造血幹細胞移植(SCT)後の合併症の多くは、移植片の生着する移植後2-3週以降に認められることが多いことから、この時期の顆粒球機能が亢進していることが予測され、SCTの前後に(前処置開始前、生着時期、SCT後2ヶ月、3ヶ月に)顆粒球機能の検討を行った。当初の予測と異なり、生着の得られる時期の顆粒球機能は低下していた。その後GVHD症状を認めない患者においてはSCT後2ヶ月で顆粒球機能は正常化した。一方複数の免疫抑制薬投与を必要とした患者においては、SCT数ヵ月後以降も顆粒球機能の低下が持続した。そこでSCT周辺のみならず、SCTを行わない様々な疾患の各治療相における顆粒球機能を測定し、検討を行った。 方法:急性リンパ性白血病(ALL)患児においては診断時、寛解導入療法後、強化療法後に全血法にて顆粒球機能(食食能・殺菌能)を測定し、臨床像との比較を行った。またその他の悪性非血液腫瘍患者においても診断時、初回化学療法後、治療終了時に顆粒球機能の検討を行った。 結果:(1)小児ALL患児における顆粒球機能:貪食能は個体差が大きく、初発時、寛解導入療法後、強化療法後いずれの時期においても、正常コントロールと比べ差を認めなかった。殺菌能は、初発時に最も低下しており、寛解導入療法後には改善を認めるものの正常コントロールと比べ低下していた。しかし強化療法後には正常化した。(2)小児悪性非血液腫瘍患者における顆粒球機能:初発時(化学療法開始前)には殺菌能の低下を認めたが、化学療法施行後に顆粒球機能は正常化した。 考察:小児悪性腫瘍患者において治療開始早期に重症感染症の合併率が高い理由として、顆粒球数低下のみならず、その機能の低下が関与している可能性が示唆された。また骨髄浸潤を認めない小児固形腫瘍患者の初発時に顆粒球殺菌能が低下していたことから、担がん状態においては、顆粒球機能低下に関与する何らかの因子を腫瘍細胞が産生している可能性が考えられた。 以上の内容について現在英文雑誌に投稿中である。
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