横紋筋肉腫(以下RMS)は、骨格筋分化制御遺伝子MyoD1やmyogeninが発現しているにもかかわらず、筋最終分化が抑制され未分化なまま増殖し続ける。その分化抑制機序は不明であり、それを明らかにすることを最終目的とする。具体的には、正常筋芽細胞において、MyoDやMyogenin蛋白のmyosin heavy chain(MHC)やCKなどをコードする筋特異的遺伝子のE-boxへの結合を競合阻害し、転写を抑制することで筋分化を負に制御するとされるId gene familyに注目し、RMSでの発現と異常を明らかにする。 Mammary epithelial cellでは、その増殖、分化の調節にId gene familyが関わっており、さらにIdの発現をmammalian target of rapamycin(mTOR)が調節していると報告された。一方、平成17年度の研究でRMS細胞における細胞増殖や細胞周期の進行に重要とされるIGF-IR/mTOR細胞伝達路における胞巣型と胎児型の違いが判明した。平成18年度は、これをもとにRMS細胞におけるId gene familyの発現調節へのIGF-IR/mTOR細胞伝達路の働きを検討した。mTOR以下のリン酸化状態に正常筋芽細胞株、胞巣型と胎児型RMSでは違いがあり、これとId gene familyの発現の各細胞間の違いに関連があると考えられる結果であった。細胞株を増やして検討する予定である。 平成19年度は、RMS細胞株でのId gene familyの筋特異的遺伝子発現の制御、細胞周期の制御に対する働きと胞巣型RWSに特異的なPAX3-FKHRキメラ遺伝子のId gene familyの発現への関わりを検討する。平成18年度は、そのためのId geneとPAX3-FKHRに対するsiRNAを作成し、それぞれの発現を抑制するものを選定している。
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