研究概要 |
本研究では、乳タンパク質由来ペプチドに含まれる新規抗アレルギー物質の単離、および作用メカニズムの解明を目的として実施した。本研究におけるペプチドサンプルはペプチドメーカーであるDMV JAPANより入手した。まず、最初にカゼインタンパク由来ペプチド混合物としてCE90GMM(平均分子量640Da)およびCE90STL(平均分子量380Da)、ホエータンパク由来ペプチド混合物としてWE80BG(平均分子量570Da)およびWE80BH(平均分子量1378Da)の4種を用いて、ヒトミエローマU266細胞によるIgE産生に及ぼす影響について検討した。ペプチド混合物を培地中へ添加し24時間培養後、培養上清中のIgE産生量を酵素抗体法(ELISA法)により測定した結果、CE90GMMおよびWE80BGのみに有意なIgE産生低下効果が認められた。また、CE90GMMに関しては、橋本らの報告^<1)>により、種々のpH条件下で逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)により分画され、それぞれのペプチドのアミノ酸配列が同定された。本研究では、同定されたペプチドの中で、低分子量のEQPI(Glu-Gln-Pro-Ile)、DMES(Asp-Met-Glu-Ser)、KIKE(Lys-Ile-Lys-Glu)、HAQ(His-Ala-Gln)の4種類に着目し、ペプチド合成を行い同様の実験を行った。その結果、KIKE、HAQに有意なIgE産生抑制効果が認められた。中でも、KIKEに強いIgE産生抑制効果が認められた。一方、DMES、EQPIには有意なIgE産生抑制効果は認められなかった。以上の結果より、KIKEが抗アレルギー効果を持つペプチドの候補として挙げられ、等電点(p/)は8.59と塩基性であることより、細胞との相互作用が強く、IgE産生抑制効果が強く発現したのではないかと示唆された。 ^<1)>Hashimoto K. et.al., J.Agric.Food Chem. 53, 3801-3806, 2005.
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