Leigh症候群(LS)は小児期に発症し、急性あるいは亜急性に進行し、重篤な神経学的後遺症を残したり、死に至ることも多い予後不良な疾患である。治療法は確立されておらず、対症療法や効果のみられた特殊な治療を試みる程度である。乳酸・ピルビン酸値が高値であることからミトコンドリア異常が推測され検索されているが、その原因は多様であり、分子遺伝学的にはミトコンドリアDNA異常、核遺伝子にコードされる電子伝達系複合体サブユニットの遺伝子異常が報告されている。臨床的にはその進行度、治療への反応性には大きな差があり、原因の同定、病態の解明ができれば治療法選択の大きな道標になると考えられる。現在の遺伝子検索による原因検索は、関与する遺伝子が多いため検索には時間がかかることと、変異のみつかる率が低いこと、病態が十分に把握できていないため、治療に直結しにくいことが問題としてあげられる。このためLSの治療法の確立には遺伝子検索のみではなく、分子病態の解明と、個々の症例に対する治療薬の効果を効率的に判定することとが必要と考え、以下の検討を行っている。 インフォームドコンセントのもと採取したLeigh症候群患者リンパ球をEBウイルスにより芽球化して使用した。通常培地で培養後、グルコース欠損培地に変更し、細胞内ATP量を発光を用いたキットにより経時的にルミノメーターで測定した。更にMELAS治療薬であるDCAを加え細胞内ATP量の検討を行った。LS患者2名で検討を行った。正常対照と比較して、細胞内ATP量は軽度低下していた。DCAを加えた検討では細胞内ATP量に変化はみられなかった。このことはLS患者ではDCAの効果が低いという臨床データと合致していた。今後症例数を増やし、更に、ビタミンB1などの治療薬に対する変化を検討し、臨床データと組み合わせて効果的な治療法選択のために使用可能か検討する予定である。
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