Leigh症候群(LS)は小児期に発症し、急性あるいは亜急性に進行し、重篤な神経学的後遺症を残したり、死に至ることも多い予後不良な疾患である。治療法は確立されておらず、対症療法や効果のみられた特殊な治療を試みる程度である。乳酸・ピルビン酸値が高値であることからミトコンドリア異常が推測され検索されているが、その原因は多様であり、分子遺伝学的にはミトコンドリアDNA異常、核遺伝子にコードされる電子伝達系複合体サブユニットの遺伝子異常が報告されている。近年、多くの進行性神経疾患の病態にCaspase依存性、またはERストレス関連の細胞死が関与し、その中心的な役割をミトコンドリアが担っていることが解明されつつあり、ミトコンドリア異常症の病態における細胞死の関与とその抑制はミトコンドリア異常症の治療法の開発の糸口となると考え、Leigh症候群(LS)において臨床的に使用しやすいリンパ芽球を用いて、ATP量および治療薬の効果を検討した。ミトコンドリア異常症(MELAS、LS)患者よりインフォームドコンセントのもと採取したリンパ球を、EBウイルスにて芽球化して使用した。通常培地で培養後、グルコース欠損培地に変更し、細胞内ATP量、Caspase3/7活性を経時的にルミノメーターで測定した。更にMELAS治療薬であるDCAを加え同様の検討を行った。MELAS、LS患者ともリンパ芽球ではCaspase3/7活性は正常対照と差が見られなかったが、細胞内ATP量は軽度低下していた。DCAによるATP量増加は患者細胞にのみ認められ、濃度依存性に増加したが、LSでの増加は軽度だった。LS患者細胞でのATP増加が軽度だったことは、DCAが臨床的にLSへの効果が低いことと一致した。今後症例数を増やすとともに、臨床データと組み合わせて効果的な治療法選択のために使用可能か検討する予定である。
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