研究概要 |
1型イノシトール三リン酸受容体(IP_3R)ヘテロ接合体・2型IP_3Rホモ接合体ノックアウトマウス同士を交配し、胎生9.0日から10.5日にわたり経時的に胎仔を取り出し、1型・2型IP_3Rダブルノックアウト(DKO)マウスの形態を観察した。胎仔の遺伝子型はyolk sacの溶解液をPCRにかけることで確認した。以下全て、1型・2型IP_3RDKOマウスについて、同腹の1型IP_3Rヘテロ接合体・2型IP_3Rホモ接合体ノックアウトマウスと比較した。個体レベルで形態を観察した後、パラフィン切片のヘマトキシリン・エオジン染色を行い、心臓の構築を詳細に観察した。特にNFATcノックアウトマウスで認められる心筋壁の菲薄化や弁の異常の有無に注目した。心筋細胞の分化の指標として収縮蛋白(βMHC, MLC2a, MLC2v等)や心臓部位・時期特異的転写因子群(Nkx2.5,Tbx5,eHAND, dHAND等)をプローブとして用いたwhole mount in situ hybridization (ISH)を行った。心筋壁厚は一定領域の心筋壁内の細胞数で定量化した。更に、Ki-67やリン酸化Histone H3に対する抗体を用いた免疫組織化学を行い、一定領域内の陽性細胞数の割合から細胞増殖能を定量化した。また、TUNEL法で陽性細胞数を計測することによってapoptosisの定量を行った。次に、IP_3Rの下流シグナルの候補であるNFATc1の活性化の有無を観察した。すなわち、抗NFATc1抗体による蛍光免疫組織化学を行い、共焦点顕微鏡下に心内膜細胞におけるNFATc1の核移行の有無を観察した。ISHの確立には、プローブ濃度やHybridization温度、proteinase K処理の濃度と時間などの条件検討を行い、免疫組織化学の確立には抗体の種類や濃度、熱処理や酵素処理などの抗原賦活法の検討を要した。
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