研究概要 |
CDK抑制遺伝子p27Kip1は増殖抑制・分化誘導に重要な細胞周期調節蛋白であり、近年CDK抑制機能以外の生物学的機能が示されている。神経前駆細胞では大脳皮質発生が進むに従い核内p27Kip1蛋白が増加、分化後の神経細胞で発現が高値となる。本年度は、神経前駆細胞内p27Kip1の発現調節メカニズムをin vivoにおいて解析した。 方法 妊娠10,12,14,16日のマウス胎児前脳頭頂部の脳室帯を実体顕微鏡下で分離し、超音波破砕機でDNAをヌクレオソーム単位に破砕した。種々の抗アセチル化ピストン抗体で免疫沈降後、DNAを精製、p27Kip1の5'非翻訳プロモーター領域にデザインしたプライマーを用いてPCRを行った。さらに、p27Kip1の転写調節に重要と考えられている転写因子の発現量をウェスタンブロットにより解析した。 結果 (1)発生が進むに従い神経前駆細胞核のアセチル化ピストンH3 lys9が増加し、それに従いp27Kip1の5'非翻訳プロモーター領域が開放されること、(2)転写因子FOXO1a、FOXO3aの発現がE10からE14にかけて発現が増加、E16で減少することを明らかにした。 考察 Delalleらはマウス胎児脳室帯のp27Kip1 mRNA発現量をin situ hybridizationで解析、E10からE14にかけて増加するがその後やや減少することを報告した(Cereb Corex,1999)。今年度の研究結果より、神経前駆細胞の分裂回数が進むにつれてヒストン修飾によりp27Kip1の5'非翻訳プロモーター領域が開放され、かつFOXO1a、FOXO3aが増加する結果p27Kip1蛋白の発現量が増加する可能性を明らかにした。今後は、なぜp27Kip1が細胞分化を誘導できるのかについて焦点を絞り解析を行う予定である。
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