心筋NaチャネルをコードするSCN5A遺伝子は、心電図上著名なQT延長を認め、心室性不整脈による失神発作や突然死を高率に生ずる疾患であるQT延長症候群の疾患遺伝子として報告された。SCN5A遺伝子は、その後、同じ不整脈でもその表現型が異なる特発性心室細動(Brugada症候群)、乳児突然死症候群、房室伝導障害、SSS症候群の疾患遺伝子として次々に報告された。様々な表現型を呈する心筋Naチャネル遺伝子SCN5Aの遺伝子異常が、実際どの様なチャネル機能異常を引き起こしているのかを検討する。また、in vitroの実験において、心筋Naチャネル変異蛋白の機能改善が認められる薬剤の検討を行い、SCN5Aの遺伝子異常により引き起こされる不整脈疾患の予防・治療に役立てることを目的とする。 本年度は、SCN5A遺伝子導入の準備として、ヒトのSCN5A遺伝子を哺乳動物細胞発現ベクター(PCDNA3.1)に組み込みSCN5A発現ベクターを作成した。この野生型発現ベクターを用いてsite-direct mutagenesisでSCN5A遺伝子に患者に認められたものと同じ変異を導入した5種類のベクターを作成した。 また、正常SCN5Aと変異SCN5Aを細胞に発現させ、パッチクランプ法にてその発現電流の解析を行う際に、心筋Naチャネルは、αサブユニットであるSCN5AとβサブユニットであるSCN1Bが会合して機能しており、細胞に共発現させるために、SCN1B遺伝子をRT-PCR法にてクローニングを行った。
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