我々は核のない細胞を長期培養することに成功し、それをミトコンドリア細胞と名付けた。その細胞は通常の細胞と比して非常に小さく、核がないにもかかわらず長期生存しうることが特徴である。その生命維持の機構は未解明であり、今回私は、このミトコンドリア細胞の発生分化機構及び生命維持機構について、アポトーシスの関与(特にカルシウム経路に関して)がどのように行われているのか、また生命維持におけるカルシウムバランスとミトコンドリア構成蛋白の活性変化を検討することを計画した。 本年度はミトコンドリア細胞の増殖性について解析を行った。その結果好気条件下のみならず嫌気条件下でも生存可能であり、また培地から血清を除いても生存が可能であることがわかった。このためTCAサイクルに関してWestern blotおよび免疫染色を用い解析を行った。この結果TCAサイクルの酵素は部分欠損していることが判明した。 前年度の研究結果より、ミトコンドリア細胞は細胞骨格蛋白およびそのDNAを保っているが、ミトコンドリアDNAがフラグメント化されていることがわかっている。これ等の結果よりミトコンドリア細胞は嫌気条件下でも生存しうる最小限度の蛋白・DNAのみを残して正常な細胞から分化した(原始地球に認められた嫌気下で生存できる原始的な生物に先祖がえりした)ことが予想された。この細胞をさらに解析することにより、長期生存しうるための機構や地球生命の成り立ちを探ることが出来るであろうと結論付けられる。
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