1)すでに肉眼解剖により得られている約100体の正常ヒト胎児の肺・腎臓の計測値データを用いて、多次元スタンダード原案作成を試みた。以下のA)からE)の5つの手法を提案し、A)からD)については学会発表を行った(内藤寛太、宇田川潤、大谷浩:ヒト胎児形態計測データの様相.科学研究費シンポジウム「統計数理の基礎理論」鹿児島大学理学部、平成17年12月19日〜21日)。 A)マハラノビス擬距離を用いた1個体の集団からの乖離度の測定法。 B)3次元空間における1次元平滑化曲線を用いたスタンダードの作成法。 C)擬等角写像の理論で用いられる最大歪曲度を用いた臓器の調和的発生の数理的考察方法。 D)2次元スタンダードにおいて、基準値からの乖離度を分位点回帰により精密評価する方法。 E)頭殿長および肺・腎の長さ・幅・前後径をカテゴリー化し、等質性分析およびクラスタ分析を行った。頭殿長が約80mmから120mmの胎児および約160mm以上の胎児は各頭殿長カテゴリで等質性が認められた。一方、120mm以上160mm以下の胎児では非等質性が認められ、この時期には肺・腎共に3次元的成長について個体差が大きいと考えられた。 2)頭殿長が50mmから250mmの胎児を計61体MRIで撮影し、42体について大脳の高さ・幅・長さを計測した。正常の大脳は、はじめ水平方向により大きく成長し、後に垂直方向に大きく成長することがわかった。 3)ヒト胎児の臓器の内部立体構造(肝臓内の門脈・胆管など)を構築する方法を検討するため、まずマウス胎児の組織切片から画像位置合せソフトなどを用いて臓器の3次元構築を行った。ブアン固定HE染色標本から臓器の3次元像再構築を行い、内部立体構造を描出することができた。また、当手法の基礎となる研究について、論文発表を行った。現在、ヒト胎児の組織標本から同様に再構築を試みている。
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