1.ヒト胎児(42例)MRI画像の三次元再構築像から得た脳の高さ・長さ・幅の計測値を用いて、3次元空間における1次元平滑化スタンダード曲線を作成した。また、肉眼的に計測した肝臓縦径・胆嚢最大長・脾臓長径に関して多項式回帰によるスタンダード曲線を作成した。これらの成果について、日本先天異常学会にて発表した(宇田川潤、他4名「ヒト胎児組織形成期における多次元発生スタンダード作成の試み」第46回日本先天異常学会、山形市、2006年6月29日〜30日)。 2.多次元尺度法を用いて、ヒト胎児期の胸部あるいは腹部の各臓器間の調和的成長について検討した。腎・副腎・肺は、各単一臓器における縦・前後・幅の三次元的成長パターンよりも、左右同一臓器の同一部位間の成長パターンが類似していた。頭殿長120mm以下の胎児では肝・腎の縦径の成長パターンが類似し、発生と共に腎の縦径は肺の縦径の成長パターンと類似してきた。頭殿長99mm以下の胎児では、大動脈および肺動脈外径の成長パターンは類似していたが、これらの大血管と心縦径あるいは心幅との成長パターンの類似度は比較的低かった。発生が進むにつれて大動脈外径と心縦径・心幅の成長パターンが類似するようになり、一方、肺動脈外径の成長パターンはこれらと異なってくることが明らかとなった。 3.ヒト胚子期の頭部・体幹・四肢の計測値から標準成長曲線を作成し、論文発表した。また、本研究の基礎としてマウス胚の脳および腸管形態形成の研究を行い、論文発表した。 4.スウェーデンChalmers大学数学科のTorbjorn Lundh博士と共に、ヒト胚子および胎児の頭部・体幹・四肢の形態発生の数学的解析を行った。これらの各部位について非調和比を求めたところ、胚子期後期から成人までほぼ一定の値になることが判明し、非調和比が胎児診断の基準として利用できる可能性が考えられた。
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