研究概要 |
網羅的な遺伝子発現解析は、細胞機能の全体像を得るのに不可欠である。例えば、ほ乳類細胞内のmRNA10,000〜20,000種のうちの0.2-10%は、癌組織と正常組織では異なった発現を示すと推定されている。これらの遺伝子すべてについて、癌組織と正常組織での発現量の差異をモニターすることは、全ゲノム解析を利用する以外には不可能と考えられている。そこで今回我々は、この遺伝子改変マウス表皮の遺伝子発現をDNAマイクロアレイにより解析することを試みた。 具体的には、酵素処理により正常表皮およびPTEN欠損表皮を真皮から剥離し培養した後、それぞれの細胞よりmRNAを抽出した。さらに上記より得られた標品を、olidonucleotideを格子状に配列したDNA chipにTarget cDNAをハイブリダイゼーションさせた後に、ハイブリッド形成の強度を指標に各遺伝子の転写量を測定した。現在その結果を解析中であり、今後はこれらの結果をRT-PCRや免疫ブロットなどの他の方法論を用いて確認する予定であるが、早晩興味深い結論が得られるものと確信している。この研究戦略は、前癌性病変から進行性扁平上皮癌に至る際の、浸潤・転移や薬剤感受性に関連した全ての遺伝子群を特定できる点で極めて革新的であろう。
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