腫瘍形成時の血管の成熟や腫瘍内での血流維持、腫瘍細胞への栄養供給において、大きな役割を担っていることが示唆されているpericyteの機能を詳細に解析し、腫瘍の抗血管新生療法における新規標的細胞としてのpericyteの有用性を検討すること目的に以下の実験を行った。 1)PDGF-B産生悪性黒色腫細胞と比較対照群の抗VEGF receptor 2抗体に対する反応性の検討 PDGF-Bを強制発現するB16 mouse melanoma cell(B16/PDGF-B)とvectorのみを導入したB16(B16/ctr)をC57BL6マウスに接種し腫瘍を形成させた後、抗VEGF receptor 2抗体を投与し腫瘍体積を測定した。B16/ctrと、腫瘍内血管周囲のpericyteの増加していたB16/PDGF-BにおけるVEGF receptor 2抗体の効果を比較し、pericyte増加による、腫瘍内血管に対する抗VEGF receptor 2抗体への抵抗性の有無を検討した。B16/ctrでは、抗VEGF receptor 2抗体を投与しない群に比べて、抗VEGF receptor 2抗体200μg投与群、800μg投与群とも有為に腫瘍の増殖が抑制された。それに対して、B16/PDGF-Bでは抗VEGF receptor 2抗体を投与しない群に比べて、抗VEGF receptor 2抗体800μg投与群では有為な腫瘍増殖抑制が認められたが、200μg投与群では有為な腫瘍増殖抑制が認められず、腫瘍内血管周囲のpericyteの増加による抗VEGF receptor 2抗体に対する抵抗性が示唆された。今後の実験ではB16/ctrでは抗VEGF receptor 2抗体非投与群との間で有為な差があったが、B16/PDGF-Bでは抗VEGF receptor 2抗体非投与群との腫瘍増殖に有為な差が認められなかった200μgをVEGF receptor 2抗体投与量とすることとした。
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