BP180はII型の膜貫通型タンパク質である。培養表皮角化細胞では、膜直下の16番目の非コラーゲン領域(NC16A)で切断され、120-kDaの細胞外断片(LAD-1)を培養液中に放出する。この切断は膜貫通型のメタロプロテアーゼであるADAMsによって担われている。一方、ヒト表皮抽出液中にはBP180細胞外部分に由来する97-kDaのボリペプチド(LABD97)が存在することが知られていた。この97-kDaポリペブチドはBP180細胞外部分のNC16Aドメイン中に加えてC末端側でも切断が起こることによって生成される。本研究は、このC端側の切断に関わっている切断酵素を同定することを目的としておこなった。昨年度におこなった研究により、私達はブラスミンによる消化/切断により120-kDa LAD-1から97-kDaの分解産物が得られる事を示した。そこで、次に、ブラスミンによる97-kDa 産物と線状IgA水庖症患者血清との反応性を検定したところ、表皮抽出液中のLABD97(97-kDaのポリペブチド)と同様の高い反応性を示す事があきらかとなった。このことは、ブラスミンが表皮組織中でもLABD97の産生を直接おこなっている可能性を示唆するものである。さらにin vitroの実験で、ブラスミンは180-kDaのfull-lengthのBP180分子から97-kDa断片を切り出せる事もわかった。ブラスミンはC端だけでなく、ADAMsに代わってNC16Aドメインでの切断も仲介できる事を示している。最近、私達がおこなった表皮由来培養細胞を用いた接着阻害実験から、BP180のC末端部分はBP180の接着機能に重要であることを示唆する結果が得られた。このことから、ブラスミンによるC末端の切断が、BP180の接着活性を制御する役割を担っている可能性が考えられる。
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