研究概要 |
小麦依存性運動誘発アナフィラキシー患者の誘発試験において、アスピリン投与後小麦製品を負荷すると、症状の誘発に平行して原因抗原である小麦グリアジンの血中濃度が上昇することを見い出している。本研究ではまず初めに、健常人においてアスピリンが小麦摂取後の血中グリアジン量に及ぼす影響を検討した。被検者7名にアスピリン(0,100,200,500,1000mg)を投与し、30分後に小麦(うどん120g)を摂取させ試験前及び食後0,15,30,60,120,180分に採血を行い、血清中グリアジン濃度をELISA法にて測定した。その結果、アスピリン濃度依存的に血中グリアジン量の上昇が認められた。しかし、アスピリンに対する感受性には個体差が認められた。次に、アスピリン以外の非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の影響を明らかにする目的で、ロキソニン(120mg),ボルタレン(50mg)およびモービック(15mg)の作用を同様の方法で検討した。その結果、ロキソニンおよびボルタレンには、アスピリン同様に血中グリアジン上昇作用が認められた。しかし、モービックについては、血中抗原の上昇作用はほとんど認められなかった。以上の結果より、アスピリン以外のNSAIDs服用によっても小麦アレルゲンの血中濃度が上昇することが明らかとなった。また、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)選択的阻害剤であるモービックでは血中グリアジン濃度上昇作用は認められなかったことから、血中抗原上昇のメカニズムのひとつにCOX-1阻害により引き起こされる消化管障害に伴う高分子物質の消化管透過性亢進が考えられた。
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