研究概要 |
かゆみのメディエイターとしては、ヒスタミンの他に、サブスタンスP、肥満細胞トリプターゼ、オピオイドなどが知られている。しかし、ヒスタミンや、それ以外のメディエイターが皮膚炎におけるそう痒や掻破行動にどの程度関与するのか不明であり、他に未知のメディエイターが関与する可能性も考えられる。本研究では、かゆみメディエイター系として、プロテアーゼが関与する受容体活性化システムの解明、K14-CASP1などのアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて、その病変部で発現する遺伝子の網羅的解析から新規かゆみメディエイターの候補遺伝子と制御系を探索し、かゆみ発症機構の解明と臨床応用を目指している。本年度はプロテアーゼが関与するかゆみメディエイター系として、とくにprotease-activated receptor 2(PAR2)(F2RL1)に注目し、それを活性化させるアゴニストペプチドSLIGKV-NH2を培養角化細胞に作用させて、シグナル伝達分子としてIRAK, IKKβ、IkBε、p38α、ERK1、JNKを選びウエスタンブロットで発現を検討した。その結果、角化細胞ではIkBε、p38α、JNKの発現が見られたが、SLIGKV-NH2単独ではこれらの分子には影響がなかった。一方、K14-CASP1アトピー性皮膚炎モデルマウスを三重大学水谷仁教授から供与を受け、SPFの環境下で継代、飼育し、実際に、アトピー性皮膚炎様症状の発症を確認した。発症後、皮膚病変部組織をからRNAを抽出精製し、マウスcDNAマイクロアレイで解析した結果、NGFファミリーなど、そう痒に関連する複数の遺伝子の発現の変動を検出できた。また、臨床的な観点から、酪酸プロピオン酸ベタメタゾンなどの治療薬の効果についても検討を行い、かゆみを指標としてそれらの有効性を明らかにした。
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