プロテアーゼが関与するかゆみメディエイター系として、protease-activated receptor 2(PAR2)(F2RL1)の活性化システムを研究の対象とし研究を実施した。まず、PAR2のアゴニストSLIGKV-NH2を培養角化細胞に作用させて経時的に培養上清を採取し、PAR2活性化によって産生されるサイトカイン、ケモカイン、NGFなどの成長因子などを抗体アレイとELISAを用いてスクリーニングした。その結果、抗体アレイによるスクリーニングでは、PAR2刺激で明確な発現上昇を示すサイトカインは見いだせなかった。しかし、ELISA法でIL-6とIL-8の産生誘導が確認できた。また、PAR2活性化により発現が変動する遺伝子をcDNAマイクロアレイにより網羅的に解析した。その結果、mRNAレベルで誘導される遺伝子はわずかであったが、複数の新規炎症関連遺伝子、シグナル伝達分子の誘導が検出された。また、培養角化細胞の実験系で、PAR2 siRNAによるPAR2 mRNAノックダウンにより、IL-8の誘導が完全に抑制されることが明らかになった。この実験系を用いてPAR2の作用を制御する薬剤をスクリーニングしたところ、従来、各種炎症性皮膚疾患に対して免疫調整作用を持つことが知られていたミノサイクリンなど、テトラサイクリン系の薬剤がPAR2系活性化によるIL-8産生を制御することが明らかとなり、PAR2系を標的とする薬剤の探索が皮膚疾患治療薬の新しい展開に寄与する可能性が示唆された。
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