研究概要 |
乳房外パジェット病において比較的早期に再発、転移の可能性を把握し、予後を改善するために、今年度は免疫組織化学染色法による研究を行った。具体的にはin situ病変と浸潤病変における局所の腫瘍細胞、浸潤細胞の性質を明らかにするために、 1)まずin situ病変と浸潤病変においてRCAS1抗体を用いてABC法による免疫組織化学染色を行い、その発現に相違が認められるかどうかを検討したところ両者に発現の相違は認められなかった。 2)同時にCEAについても同様の検討を行い、特異性、感受性についてRCAS1と比較したところ、陽性率に差はなかった。 3)また、腫瘍が浸潤していく際に宿主にどのような免疫応答がおこりえるのかを表皮内の樹状細胞、浸潤リンパ球をそれぞれCD1a、CD4、CD8に対する抗体を用いて検討した。興味深いことにin situ病変では、腫瘍細胞を取り囲むように表皮内のCD1a陽性樹状細胞が存在し、また一部に真皮内CD1a陽性細胞の増加を認めたが、浸潤病変においては表皮内のCD1a陽性細胞の著明な減少を認めた。In situ病変、浸潤病変ともに真皮乳頭層のリンパ球浸潤が著明であったが、CD8陽性リンパ球優位であった。 以上の結果から、局所での腫瘍細胞の浸潤にはCD1a陽性樹状細胞が大きく関与していることが明らかとなった。 来年度は、乳房外パジェット病患者の血清を定期的に採取し、血中のRCAS1およびCEAの測定を行うことにより再発、転移の早期発見が可能かどうか。また、進行期(stage3,4)乳房外パジェット病患者の血清についても化学療法前後に同様の測定を行い、治療効果判定に有用であるかどうかを検討する予定である。
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